コマンドウルフ高機動型
COMMAND WOLF / HIGH-MOBILITY CUSTOM

コマンドウルフ高機動型

■RZ-009-HMX コマンドウルフ高機動型評価試作機

ZAC2080年代から、ヘリック共和国軍は、大陸間戦争および巨大彗星飛来による大異変によって疲弊した軍備の建て直しに、本格的に取り組み始めていた。それは、新型ゾイドの開発と現行ゾイドの近代化改修を中心とする、第一次整備計画としてまとめられた。コマンドウルフは数次にわたる改修を経て、最終的に「アタックカスタム」と称される攻撃力と機動性を強化したタイプへと改修されることが決定し、RZ-042という新しい制式番号を与えられることになるのだが、そこに至るまでには数多くの改修案が提案され、そして消えていった。

この「コマンドウルフ高機動型」も、そうした多数提案された改修案のひとつである。この案は、機体周囲を流れる空気の流れを制御することで、より一層の安定性と高速性を付加し、ゾイドの運動能力を限界まで引き出すことを志向する、極めて野心的なプランでもあった。その目的を達するため、設計には空気力学が応用され、その結果としておよそコマンドウルフとは思えない丸い頭部という特徴的な外観が生み出されたのである。

ただ一機だけ試作された機体は、テストにおいては満足すべき性能を示したが、機体改修にかかるコストが高いこと、機体構造が複雑であること、限界性能を発揮するためにはパイロットの優れた技量が必要となること等がネックとなり、制式採用は見送られた。軍が求めていたのは、生産性が高く、そして扱いやすいゾイドであり、この高機動型は、そうした軍の要求に応えるには、少しばかりデリケート過ぎたのかもしれない。ちなみに、この試作機は規定のテストプログラムを終えた後、新型兵装のテストベッドとして、共和国軍兵器システム開発局武器開発課に配属されている。